2017年06月02日

VitraDesignMuseumでの展示

Together! The New Architecture of the Collectiveと題された展覧会がVitra Design Museumで始まります。会期は9月10日まで。
「食堂付きアパート」が詳細展示されていることもあって、オープニングイベントに出席してきました。
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この展覧会は、RubyPressとEM2Nのキュレーションによるもの。前者が内容を、後者が会場構成を、という役割分担なのだが、飲み会と化したディナーでは、見せ方ひとつひとつについて両者の間で濃密なやりとりがあったことを知りました。(Vitraの建物の中で、IKEAのテーブル脚が多用されていたのは愛嬌)
展示されている集合住宅は、簡単に言えば、共同体を定義する集合住宅。プライベートスペースは小さく、家族に代わる集団での共有スペースは大きく、という傾向。生活の場である住宅やその周辺を、建築が共同体を定義づけながら、具現化したプロジェクトが展示されている。
Alternativeが隠れたキーワードになっている。一般的な住宅ではなく、Alternativeだからこそ、どうしてそれが実現し維持されているかについて、なんらかの経済性も展示されている。やはり土地をどう入手するかと、主体が誰かと言うことがポイントで、75年や90年の定期借地+コーポラが比較的多かった印象。このあたりは全部記憶できていないので、もう一度記録を読み直す必要があるけども。

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ゲーリー設計の美術館の中で展示


20以上のプロジェクトがRoom1に1/20スケールで並べられ、Room4には4つのプロジェクトが詳細展示されている。食堂付きアパートはRoom4にも場所をもらって、内容、仕組み、プロセスを表している。
Room1では空間の意味合いごとに色が塗られているが、ここはかなり引っかかった。図式的すぎるし、建築のつくり方に寄り切れないとかねがね思っているからなんだけど、ある意味伝統的な方法なのだ。違和感を感じられたことはとてもうれしい。Room4での展示で用途複合が建築の形態につながる可能性を、もう少し強調すれば良かったかなと反省。

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Room1での展示。
読み取りが少し機械的な印象を持ったが、
伝統がなせるワザとも言えるのだろう


Room2は歴史。知らないモノが沢山あって、勉強不足でもあるけど、近代建築の歴史の厚みを感じた。

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Room3は、原寸大の展示。その壁面には食堂付きアパートをはじめ、今回の展覧会ブックレットに収められた写真も掲示されている。
原寸大の空間展示は「cluster apartment」の一部を。家族のユニットが解体され、複数の個室+シェアファシリティに還元されている。地域社会圏で提示した構成。このような構成は一つの流れのようで、他のプロジェクトでも部分的に導入していた。ただ、展示の問題なのか、そもそものデザインの問題なのか、あまり建築の空間には興味がなさそうで、どちらかといえば構成に興味があるように見受けられた。だから、その空間の用途を示す家具やら設備を強調してしまう。集合住宅の展示の難しさはここにある。先ほどの違和感にも通じる。
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Room4は、詳細展示。
供給やサステナブルな観点から特徴のあるプロジェクトが4つ。僕たちが設計した「食堂付きアパート」もその一つ。
それぞれのプロジェクトに落ち着いて向き合えるようにと、最上階の伸びやかな空間の中に、2.5m×1.2m程度の大きなテーブルが4つ配置されている。
僕たちは今まであまり外に出せていなかった写真やタイムラインの表現を提示した。このあたりは、「これからの建築士賞」をきっかけに事務所でつくったマテリアルが多い。Vitraには模型を貸し出した。5年間という長期貸し出しwあちこちに巡回するんだそうです。
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シンポジウムを拝聴。キュレーターたち6人。これがノーマルスピードの英語かぁ。タフでした。プログラムをどのように決めるのか、についての話が多かった。伝統的にボトムアップを得意をするウィーンの方法と、トップダウン(つまりデベが決める)の方法との相違が対比され、どのタイミングで専門家の知恵を投入するのか、という話に。また、どこの都市も家賃が高騰し、住みづらくなっていることが、共通の背景のようだ。集合住宅の話は歴史はもちろんなんだけど、慣習とか政治とか、その国・地域の固有性を共有できないと難しくて、そこが僕にとっては課題ですね。

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シンポジウムはフラードームの中で行われた


キュレーターの一人であるIlka Rubyに尋ねたのだけど、ヨーロッパ、イコール、コミュニティコンシャスな集合住宅が多い、というのは誤解で、近年(とくに経済危機以後)は全くそうではないと。だからこの展覧会を企画した。ソーシャルハウジングは多かったが、それはありきたりの内容で、住宅も必要最低限を勝手に決められ量産されてきたとの反省がある。
今回展示されている集合住宅はどれもすばらしいが、ただ、どのような経済クラスが入居するのか、という設定にも依るのではないか、と質問したところ、それはそうだが、まずはこのような現象が生まれて広がってきていることを認識すべきだと言われた。今回の集合住宅がだれに向けられているのかは(あまり表現されていない印象だったのだが)、もうすこし読み込んでみようと思う。
VDMでの展示は、例年は2つで、建築とデザインとにわかれているそう。ゲーリー建築のトップライトを閉めずに展覧会をやるのはけっこうレアだと聞きました。光を受ける面がいろいろな傾きを持ち、ホントに気持ちの良い空間だった。インタビューでMyEnglishは撃沈したけど、こんなに気持ちの良い空間に展示されていることを考えると、すぐに気持ちは回復した。
キュレーター助手のYuma Shinoharaには、いろいろお世話になりました。ヨーロッパの事情も深く教えてもらって、楽しい半年間でした。特にRoom4での展示に関しては、今年の1月にわざわざ事務所まで来てくれ、かなりのやりとりをして、詳細に理解してくれた。Yumaさんには、僭越ながら、建築の物的な新しさが展示では薄い印象を伝えたところ、むしろこういった社会の新しい動きや複雑な状況にカタチを与えることが建築家の第一の責任であると言っていた。あらためて「これからの建築士賞」の意義深さを感じた。あの賞はすばらしいと思う(もらえなかったからなおさら)今回のここでの展示も、特にRoom4はプロセスに言及した展示ばかり。中には30年前からのも。
最後の最後にやっと旅程を管理してくれたSabrinaさんにも会え。航空券代は出なかったけどそれ以外はいろいろ面倒見てくれた。言ってみるもんですね^^v
そもそもは、ヴェネチア・ビエンナーレ日本館への出展がきっかけなわけで、機会をいただいた山名先生をはじめ、関係のみなさんには感謝申し上げます。
そして、ヴェネチアではオーストリア館の展示に感銘を受けたが、今回もまた興味を引くプロジェクトがあった。是非ウィーンに、オーストリアに、意味ある訪問の機会をつくりたい。
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この展覧会に合わせて出版されたカタログ本。表紙は(あと奥付も)、食堂付きアパートの3階の部屋からの写真です。なんでこれ?っていう写真ですが、他の写真も本に収められています。撮影は、ベルリンの写真家、Daniel Burchardによるもの。写真、とても良い。小さなカメラで、しかも、フィルム。
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posted by naka studio at 00:00 | 出展・講演